トリックスターズ

トリックスターズ (電撃文庫)*1
作者:久住四季
挿絵:甘塩コメコ→イスどんぶり
 

前書き

  • してやられた。最後の詭計にしてやられた*2

 
カバー折返しの”ミステリを模った物語”というフレーズと、出だしで感じた印象があったので、「どんな謎をどのように解明していくのか」が楽しみで読み出しました。
(なので、キャラクターそのものへの注意力は散漫だったかもしれません)
 

感想(どう書いてもネタバレする類の作品っぽいので、ネタバレ注意)

終盤、事件の全容が暴かれていく心地良さを堪能しました。
(ここで終わっていたら、「良く出来た作品」で終わっていたかも・・・)
 
ところが、迎えたラスト。
外に働きかけるメタな感覚と、勝手に抱いていたイメージを根底から覆す詭計にしてやられました!
 
うわ、鳥肌!!
 
即座に読み直し、端々に書かれていたモノと、書かれていなかったモノを確認しましたよ。
「誰が・何故・どのように」の謎解きは勿論のこと、答え合わせまで楽しめて一石二鳥。
どんでん返しで実感し直したキャラの魅力*3も合わせて、一網打尽な面白さがありました*4
 
これは大人買いして正解っぽい♪
(さて次だば)
  

考え事

この作品において、魔術は体系化された学問、実践化された技術の一種です。
誰がどのように発展させてきたか、という史学的な面も重要視されていました。
 
このスタンスを前に、思い出したのは『これ』の中の次の一文。

人類学の知識のない作家が魔術に関して書くと、幻想になってしまいます。
人類学を勉強している人は、魔術師が姿を変えたり、空を飛んだりするわけではないことを知っています。
 
中沢新一/人類学に基づいた魔術に対する考え方-『ゲド戦記の愉しみ方』より:35頁)

 
魔術というミステリにとっての劇薬を用いつつ、なおミステリでありつづける為に必要なものの正体。
これが掴めた気がしたり、しなかったり*5
 
この方』の言葉を借りるなら「本格ミステリ信者さんの解毒剤」としても、オススメ出来る作品と言えるんじゃないかと思います。

*1:電撃文庫

*2:糸色望的に(笑)。

*3:B●KU属性w

*4:思い入れすら持たせて貰えなかった被害者の描き方には少し凹みましたが・・・

*5:もっとも本作においては「姿を変える魔術師」が登場しますが、その難易度は非常に高く、また「変身すること」を明示し、かつ要素として消化しきってますから無問題でしょう