ゲドを読む。

これは、糸井重里氏発案のDVD発売キャンペーンらしいのですが、内容が実に興味深かったです。
 
ゲド戦記の愉しみ方』と題された、中沢新一氏による原作の解説に始まり、原作内の名台詞集が続きます。
後を受けるのは、河合隼雄氏による原作の分析。
次が、翻訳者へのインタビュー。
直接映画の内容に踏み込んでいるのは、巻末にある監督へのインタビューのみでした。
 
原作へのリスペクト、もとい原作好きへの配慮がうかがえます。
この戦略はズルイ、(いや認めます)上手いと思いました。

正直な話。

この映画は「原作ファンの期待に応えた」とは言いがたかったです。
(むしろ・・・orz)
なので、真っ正直な広告では、売上に関して勝算が見込めなかったと思うんです。
そこで取られたのが、今回のフリーペーパー作戦。
まずアイデアで釣りあげ、ペーパーの内容で映画を受け入れるだけの下地を作る戦略、なんじゃないかな。
 

このペーパー、もとい本を

最初から最後まで読むと、「原作が好きなのは、自分と一緒なんだね」的な親近感が多少湧いてきます。
更に「映画の、あの解釈もアリなのかな!?」となり、抱いていた拒否反応を若干緩めてくれます。
攻城戦で例えると、この作品に対して感じていた溝=堀は、意外と埋まった感じ。
「戦略的勝利」ってフレーズが頭をよぎります。
 

ただ、問題が一点。

それが「果たしてどれだけの人間が、全てに目を通してくれるか?」です。
100万部刷った中の何割が読者の手元に届いて、その中の何パーセントが最後まで見てくれるのか分かりません。
おそらく相当数が処分されてしまうんじゃないかと推察します。
(都心では入手が難しくても、首都圏郊外の店では結構余ってますね)
 

だから思います。

何も100万部全てを配布する*1ことは、なかったんじゃない

 
原作の出版社に頼み込んで、特典として抱き合わせをしたって良かったのに。

  • 色違いもあるようなので、一巻ごとに違うカラーの「ゲドを読む。」を付けて、「全巻買うと全色揃う」とか
    • パッケージ化しておけば「監督や、手嶌葵のサイン付」を紛れ込ませることも出来た訳だし、読者の購買意欲をより高める事も出来たのでは?

  
発案は面白かったんだから、あとはエンドユーザーの手元に届く戦略も一緒に練っておくべきだった気がします。
んー、惜しいなぁ。

*1:ここでの配布は「手渡し」の意