ジャストボイルド・オ’クロック

ジャストボイルド・オ’クロック (電撃文庫)*1
作者:うえお久光
挿絵:藤田香


これは映画みたいな小説でした。


なんの予備知識もなくふらりと入った劇場で、
最初の10分くらいを見逃して、
それでも伝わってくるスタイリッシュさに目を見張り、
最後には満足して、もう一回見たくなる類の。


(アニメだとカウボーイビバップがこんな感じかな)

【内容】

いつかの未来。
人類が脳に「珪素脳」を持ち、「家電」と共生している世界。
過去の事件のせいで「裏切り者」と呼ばれる探偵ジュードと相棒家電の黒猫アル。
お金はないけれど、今日もそれなりに、なんとかやっている彼らは、とある理由から、人探しの以来を受けることに。
探す相手は世界的に有名なウイルスデザイナーのゴービー博士。
しかし、博士はすでに数年前に死んでいるはずで・・・。
(本文あらすじより抜粋)

【解説】

これだけ読むと突っ込みたい要素が多々あると思います。
なにせ、物語の核をなす設定が、さも当然の事実のようにあっさりと表記されてますから(^^;。


当然。
本文中にはある程度の説明はありますが、物語の流れを止めてまでの解説はありません。
普通なら説明不足で訳分からん状態に陥るのですが、この作品ではそんな印象は持ちませんでした。


何故か?
理由はいくつかありますが、第一は登場人物の魅力、じゃないかな。
とにかく掛け合いが軽妙です♪
んでもって、挿絵も素晴らしいのです。
序盤の冗長さ*2もなんのその。
違和感を抱えたままの読者にページをめくらせる力があります。
で。
読み進め、最小限の舞台の説明を見て気づきます。
最低限知っておくべきことは、その人間を誰より身近に思っている存在が居ると言う事*3
そこだけ忘れず押さえれば、あとは楽しむだけでした。
文字通り見せ場たっぷりの終盤に大満足でしたよ〜。




例え何を失っても痛みと向き合って乗り越えること。
そして・・・。
そもそも失わないために強くあること。


それが「ヒーロー」に求められる資質で、ジュードは正しくヒーローでした!

【感想】

最終的には「こっちのまま」w。

*1:レーベル:電撃文庫・発売日:2006/09

*2:これは読み手の情報が不足しているだけであって、もう一度読むと「いかにも」です(笑)。

*3:そんな存在を当たり前のように存在させる為の説得力のある舞台装置として「家電」があるんだろうな