黄昏色の詠使い
副題:イヴは夜明けに微笑んで
作者:細音啓(Sazane Kei)本人サイト→http://sazane.exblog.jp/
挿絵:竹岡美穂
高校の頃、地学部員でした。
理由はいくつかあるのですが、「星の観察と言い張れば学校に泊まれる事」が何より魅力的だったり(笑)。
- 実験室のソリッドな机で、ミニピンポンやったり
- 実験用のバーナーで鍋やったり、とか。
そんな事を時々ふっと思い出す時があります。
この作品の読了後。
それと同種の懐かしさを覚えました。
高遠砂夜さんの「姫君と婚約者」にも通じる、静かで・ちょっと切ない・ストレートな物語です。
用語
- 名詠式
- すなわち相手の名を詠うこと。出会いたい物、呼び出したい物を心に描き、その名を賛美することで自分のもとへと招き寄せる技術。その特徴は『色分け』。
- 色分け
- 『名詠式』を特徴付けるもの。その根底にあるのは「同色の物質は、同波長の光エネルギーを有している」とする考え
- これに基づき、名詠では呼びかける対象と同色の「触媒」を用い、同色という共通項を足がかりとして、対象を招き寄せる
- 基本は『赤』『青』『黄』『緑』『白』の五色
- 一口に『名詠式』と言っても、各系統により求められる資質・適性があり、複数の系統を修めることは困難とされる
- で、ありながら五種全てを修めた人物が唯一人居り、特別に『虹』色と称されている
- 一口に『名詠式』と言っても、各系統により求められる資質・適性があり、複数の系統を修めることは困難とされる
- 『名詠式』を特徴付けるもの。その根底にあるのは「同色の物質は、同波長の光エネルギーを有している」とする考え
内容
(名詠式の)専修学校に通うクルーエルは、年下の転校生で、異端の夜色名詠を学ぶネイトに興味を抱く。
一方、学校を訪れた虹色名詠士・カインツもまた夜色名詠の使い手をさがしていて・・・・・・!?
(カバー折返しより)
感想
ランブルフィッシュの某シーンを彷彿とさせる欲張ったプロローグ。
これを背景に展開される物語は、寄り道がなくストレートです。
登場人物も(若干名、考えなしの大馬鹿者は居てますが)厭味がなく、雰囲気はどこまでも柔らかいです。
なので、作品の仕上がりはとても「やさしい」ものに。
この先を続けるとキャラの内面に踏み込まざるをえないので、以下ネタバレ。
「1が2になること」と「0が1になること」
方向性は同じでも、意味するトコロは全くちがうと思ったことはないでしょーか?
「無」から「有」への変化もさることながら、そこに辿り着くための道筋の数が違うと自分は思います。
前者には「1+1」の他、「1×2」の道があるのに対して、
後者には「+1」しか方法は無いんですから。
作中の夜色(「約束」を守ったイヴの取組)は、正しく「0を1にする」もので奇跡の部類。
対するカインツの取組は「1+1+1+1+1」を「5」にするもで、常識の範囲。
そこを乗り越えて「5」を「7(虹)」にして初めて、イヴに並んだんでしょうね。
わたしはまだ、あなたの名詠を見ていない
(285頁)
この言葉の裏にある、奇跡を起こせるはずだという「信頼*1」はとても良いなぁ。
それに応えて、「約束」を守ったカインツも格好良いなぁと思います。
そんな二人が迎えた再開を信じて疑わないラストも良かったです。
(御伽話になってまいますが)カインツが虹の真精にでもなって、「いつまでも幸せに暮らしましたとさ」で終わってくれたら、多分泣いちゃうだろうなぁ。(時折、どこかで会えましたとさでも充分)
一応、「五色の名詠とは次元を異にする色(289頁)」との表記*2もあるので、「始まりの一人*3」になれる可能性はあると信じて、続きに期待しますです!
追記
これじゃ主役が誰か分からねーですな(^^;。