人類は衰退しました

人類は衰退しました (ガガガ文庫)*1
作者:田中ロミオ
挿絵:山粼透
 
文字を追っかける事、それ自体が楽しい作品でした。
なので感想を言葉にするのがヒドく難しいです。
けれど。
「ただ面白かったです」だけでは芸がないので、それなりにまとめてみます。
 
最大の魅力は「独特の言語感覚」と、「全編に漂うユルさ」かな。
 
で、まずは前者に注目してみます。 
一人称(=自分の目線)で進むストーリーと、斜め上を行く台詞。
これがスルり、と脳に浸透します。
ネタ的には「黒い」というか「毒」も孕んでいるのですが、文章に「引っかかるトコロ」がありません。
無理矢理例えると、咳止めのシロップみたいな感じです。
過剰摂取は害なんだけれど、それに気づかせない装いをしています。
 
続いて後者。
全力を「出し切らない」のではなく、「出し切れない」キャラクター群が作る雰囲気は、殺伐としたトコロが無く、のどかです。
衰退した人類であるヒロインは積極性とは無縁で、食わずとも(故に働かずとも)生きていける妖精さんは楽しい事を追求するのみ。
自然、気張る必要性がないんでしょうね。
 
また。
全世界を巻き込むような大きい話題ではなく、箱庭的な小空間での出来事が描写されるのも良いです。
手に余らず、ひたすら愛でるだけで良いってのは気楽です。
深く読もうとすれば、それも可能っぽいけど、ちょいと材料不足。
なので。
今はただ、恐がると「ぴー」っと泣く妖精さんの可愛らしさを、ストレートに堪能しとこうと思います。
続きに期待。
 

蛇足

  • どことなく星新一的な印象があります
    • ユーモアは勿論、同じ名前のキャラクターを使いまわして新しい物語を展開する出来る構図とか*2
  • この他、キャラクターの雰囲気が近いのは「終わりのクロニクル」かな
    • 自動人形とかヒオのテンションは、わりと同系っぽい印象が

*1:ガガガ文庫

*2:妖精さんは物忘れが激しいので、いつもプレーンな状態ですし