クラッシュ・ブレイズ(6)

ソフィアの正餐会―クラッシュ・ブレイズ (C・NOVELSファンタジア)*1
副題:ソフィアの正餐会
作者:茅田砂胡
挿絵:鈴木理華
 

【感想】ちょっとネガディブかも

ジャケに反応して購入したものの、冒頭読んだ段階では「これって、ホントに続編?」とか思ってました(笑)。
だって理解出来る名前が出てこない・・・(^^;*2
 
知らない人を放置するようで、キャラの固有名詞を挙げてどうこう言うのは避けてるんですが、読了後真っ先に思ったのは・・・
 
 
ヴェラーレンは偉かった
 
 
の一語でした。
この人は、このシリーズの前作とも言える「暁の天使たち」の悪役の一人なんですが、どこがどう偉かったか説明する前に、自分のなかでの悪役の位置付けについて、ちょっとだけ。
 
物語の真の悪役には義務がある、と思ってます。
それは、ヒーローの恐怖・畏怖・怒りの対象である事が一つ。
そして、ヒーローの好敵手である事です。
 
排除された後、哀れまれるようじゃ好敵手の資格はありんsゃしません。
それはせいぜい小悪党でしかなく、これを片付けたところで満足感なんてねーのです。
ゆえに、悪役のいない物語にはどこか物足りなさを感じます。
  
このシリーズの、「主人公が必ず勝つ」と分かっている展開。
これは越後のちりめん問屋の御隠居一向と一緒なんですが、大きく違う点が一つ。
 

それは主人公等の目的意識です。
むこうは大義で動き、こっちは義憤(極論すると私憤)で動きます。
 
好敵手を相手にした場合、大義だろうが私憤だろうが、得られる結果・達成感には概ね満足出来ます。
(それが悪役の勤めです)
が。
小悪党を相手にした場合、結果得られる満足感は大きく変わってきます。
勧善懲悪の御隠居一向が後に残す爽やかさを、私闘の結果から得るのは、かなり難しいです。
 
個人的にゃぁ、弱いものいじめにしか見えません・・・。
 
主人公を強く描くのは良いけれど、敵を凡愚としすぎるのは、どーなんでしょ?
せっかく積み上げた自分の価値を、自ら下げるようなモノじゃないのかな?
 
なんでもありのシリーズなのは分かってます。
が。
戦闘シーンを描くなら、もうちょっと見事な悪役を用意してくれないかなぁ。
それが無理なら、平和な学園生活のシーンで楽しませてくれないかなぁ。
 
なんとなく「周りは全部敵」的な張り詰めた印象が強いシリーズに見えるのがなんとも・・・。
強いはずの主人公なのに人間不信で、余裕がないような感じだし*3
せっかく個性的なキャラなんだから、その魅力を引き出してくれる配役と舞台を整えてほしいトコロです。
(黒爺的にグランド7の生き残りとか、出てこないんでしょーか?)
  
最後に。
上にあげたヴェラーレンについて。
この人は我執で動いて主人公等の逆鱗に触れ、本気で怒らせた人です。
当然、容赦無くやられる訳ですが、それまで見せた事のないほどの激怒を引き出した点、
そして、こっちの胸が全く痛まないほど自分勝手な悪党に徹した点は見事だったと思ってます。
  
彼は一人だったのに、今回は(ry。
あん時は星系全てが危うかったのに、今回は(ry。



偉かったなぁ、ヴェラーレン。

*1:レーベル:C NOVELS FANTASIA・発売日:2006/11/25

*2:第二章に入って、やっと事情が飲み込めました。

*3:オンタロスよりは落ち着いてる感じはしますが・・・