連射王(下)

連射王〈下〉 
 
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感想

主人公の高村は、恵まれてるなと思います。
彼の周りには、道は違えど気の置けない友人のほかに、価値観を共有できる仲間まで居ます。
・・・何より。
嘘をつくときのクセまで覚えてる人間が居てるんです。
その幸運を理解できているのかな?
 
下巻冒頭の段階での答えは否、でしょう。
上巻読了後に覚えた「ハッ倒したくなるようなニブさ」、それゆえに生じたズレ。
その本質を理解出来ないまま取った行動が、それを証明している気がします。
 

彼の選択は「回避」でした。

既に読者は知っています。「自分しか見えていない回避は下策」だと。
逃げてるんじゃなくて、行く当てが無いから漂ってるだけ。
 
下巻の最初のヤマは、その中途半端さを自覚するトコロから。

何故、俺は、・・・・・・嘘をついたんだ?
嫌いだから、知られたくなかったんじゃないぞ
(061頁:高村コウ)

その後も続く自問自答の果てに知覚したのは、覚悟も、言葉も何もかもが足りなかった事。
 
それを確認した時から、物語の空気が変わります。
次のステージへ進む資格が出来た合図です。
 

何をどうしたいのか。

それが分かってからの展開は圧巻の一語!
  
作中、一番の激戦地で、

い、言うなあっ
(214頁)
 
い、言うなあっ
(214頁)
 
嘘つき。嘘つきが、出来るとか言うな
(221頁)

と言われてしまっているので、詳しくは触れませんが(笑)、



目的意識の高まりとともに、物語が結末に向かって加速収束していく疾走感。
意識が研ぎ澄まされ、ズレていた歯車がピタリと収まっていく心地良さ。
ゴールは見えないけれど、ルートは間違っていない確信。
 
それらが合わさって覚えたのは「大・満・足」です♪
 
余韻を引きずらないラストにも納得。
過去(勝利したこと)ではなく、今(勝利すること)を求めるのなら、振り返ってる時間はないんでしょう。
 
たかがゲームされど・・・、な快作でした!!
 

あとがきには*1

「ンなもん、読者に決まってます」よと。

*1:ひとつの問いかけが。曰く「誰が一番本気だったのかなあ」 一歩間違えたら「たけしの挑戦状」です(^^;。