冬の巨人

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作者:古橋秀之
挿絵:藤城陽
 

内容

終わりのない冬、果てのない凍土の只中を、休むことなく歩き続ける異形の巨人”ミール”。
その背に造り上げられた都市は、人々の暮らす世界そのものだった。
都市の片隅に住む貧しい少年オーリャは、神学院教授ディエーニンの助手として、地上から、そして空からこの”世界”の在り方を垣間見、そこで光り輝く少女と出会う。
”世界の外”から訪れた不思議な少女は、老い果てた都市に何をもたらすのか。
そして、千年の歩みの果てに巨人がたどり着くところとは――。
(裏表紙より)

 
一口にまとめると、主人公オーリャが恩師ディエーニンにモノの見方を教わりながら、人と出会い自らを確立していくボーイミーツ○○な話、です。
  

感想

1時間くらいのOVAをノベライズしたかのような作品でした。
その最大の要因は、圧倒的なビジュアルイメージにあります。
枚数自体は少ないものの、挿絵は全て見開き2ページに渡る渾身の作。
 
作中、

わしはわしの見たミールについて、古今の資料にわし個人の所感を交え、百万の言葉を尽くして書き綴ることができる。
しかしそれは、君の描く一枚の絵に及ばぬものかもしれん。
(90頁:老学者ディエーニン)

という台詞があるのですが、この本自体にも同じ事が言えるんじゃないかと。
 
この直後には、

無論わしとて、わし自身の残すものが無意味であるなどとは思わん。

と言う言葉が続くのですが、これが作者自身の言葉に見えて非常に興味深かったです。
 
また。
最後の展開によっては「フランダースの犬」になりかねなかったのですが、無事回避。
なので後味も良いです。
それを盛り上げるラストカットも秀逸で、見てると前向きになれそーな気がしてきます♪
 
昨今珍しいくらい真っ当なファンタジーでした。
 

追記

ウィザーズブレイン・鋼鉄のレギオス・天空の城ラピュタとか好きな方向け、かな。