霧の訪問者

霧の訪問者 薬師寺涼子の怪奇事件簿 (講談社ノベルス)*1
作者:田中芳樹
挿絵:垣野内成美


田中芳樹さんの文(とりわけこのシリーズ)には中毒性がありますね*2
穏やかに過ごす為に、無意識に目を背けている出来事を、唐突に突きつけられるような感じがします。
それに共感するのか忌避するのかは、受け手次第なんですが最近の自分は「ちょっと勘弁な」って心境になります。


(振り返ってみるに)中高生の頃までは、徹底的な権力への揶揄は心地良かったです。
なので当時この作品を読んでいたなら、ニヤリとして拍手してたんじゃないかな。
ただ、今では「正直、ここまでコキ下ろす必要があるのかな」と、思ってしまいます。
(これが大人になったって事なのか・・・)


自分では変わっていないつもりでも、(厳然として)かつて礼賛していたものを素直に受け入れられない今があります。
自身の志向の変遷を再確認させられました。



って、もう。
作者の毒に染まるのが嫌なものだから、自分を語って自己確認しちゃったじゃないか!
タマらんですよ、本当に。




ま。
それはそれとして、最後に今作の一推しシーンでも(^^;。

由紀子は苦笑した。苦笑でも、笑うと表情がやわらいで、美人度がアップする。
「おたがいにたいへんね」
(136頁)

とてもとても、ホッとするフレーズでした♪

*1:レーベル:講談社ノベルズ・発売日2006/08/24

*2:個人的には"厨"毒性だと思ってますが・・・