"文学少女"と飢え渇く幽霊

”文学少女”と飢え渇く幽霊 (ファミ通文庫)
作者:野村美月
挿絵:竹岡美穂


命ってのは尊いもので、生きてく為には食べなきゃいけない。
だから食べるってのは尊い行為で、食事を任されるってのは愛情表現のひとつなんだろな。
ガラにも無く、そんな事を感じさせてくれる作品。


なので、

・・・・・・ただ、知りたかったんすよ。遠子姉の作家が、どんなやつか
(121頁)

には、ドキっとしました。
果たして"文学少女"である先輩が「あの作品」を口にした事があるのか、とても気になりました。
挙句の果てには「食べたら分かるもん」って台詞がどこかから湧いてきて、ちょっと気恥ずかしくなってまいましたよ(爆)。


閑話休題
今回の作品が借体したのは「嵐が丘」。
登場人物の破壊的かつ一方的な思慕の念が狂おしいほど・・・。
そんな中、数年かけた妄執に真正面からぶつかった少年の素晴しさ*1
(以下、ネタバレ引用なので反転。未読の方はスルーを推奨)

・・・・・・オレは、ごめんなさいとか、ありがとうとか、そんな言葉、欲しくなかった・・・・・・なぁ、蛍・・・・・・おまえは、オレのこと好きになりゃよかったんだ。時間があれば、もっといろんなとこ連れてってやったのに・・・・・・いろんなもの食わせて、太らせてやったのに
(312頁)

悔しいだろうなぁ(T^T)。



でも。
恋愛の枠は既に埋まっていた彼女が示せる最大限の親愛を受け取った、彼は間違いなく勝利者です。
(彼から見れば)思いは届かなかったけれど、彼女に結末を選ばせた事を忘れないで欲しいな・・・。
自分で選んだ結末だから彼女に後悔は無く、それゆえにこの作品はハッピーエンドなんだと自分は思います*2


この辺は加門七海の小説「人丸調伏令」とか、山田謙二のコミック「アクトレス」に通じるものがあって、とても印象深かった次第。
次の御題は何になるんでしょ?
とにかく期待して待ちまする♪

*1:若干ナルシストのきらいはあれど(^^;。

*2:って、これは作中の〆と一緒ですね・・・(^^;。