フレイアになりたい(2)
内容
高校生最後の夏、夢の映画制作に動き始めた風間瞳。
映画の華・主演女優役には顔よし、アクションよしの妹分・音無夜空を狙っているが交渉は難航中。
そんな矢先、同級生が自殺した。
「神格能力者」の仕業と疑う瞳は、犯人を探し始める。――
(裏表紙より)
感想
副題のなかに「ハーデス」の文字を見たとき、「オルフェウス」かなと思いました。
「エウリディケ」の心当たりもあったので、「もしかして」と微妙な期待もあったのですが・・・。
全くもって甘くねーですな。
その現実が身にしみている姉2人は良いとして、妹にはツライ話でしたね。
平凡な0からのスタートすらきれていないのに、ハンデばっかり増えるんですから。
だからこそ日常への憧れが際立つカタチになって・・・。
(これってば、ある意味狙い通りなんだろな)
考察めいたモノ
この作品の狙い、もとい作者が伝えたいこと。
表層的には、何かを失わないと何も始まらないという風にもとれます。
が。
実際は、ありふれた日常だって幸せってことでしょう、やっぱり*1。
それを象徴するのが、次の台詞だったと思います。
――でも、おまえも変なやつだよな。ハーデスなのにフレイアなんて
(268頁:風間瞳)
「神格能力者」である彼女にとってのフレイア。
これまでは、「現実的で特別な能力者」を意味する語だったはずの「フレイア」が、自分を「応援してくれる存在全般」を意味する象徴的な言葉として用いられていました。
逆に言えば。
姉ふたりは既に、妹にとってのフレイアになってますよね。
その事をもっと実感出来たなら、幸せなその後も見えるんじゃないかな。
最後に
一巻の感想を書いた時にも思ったのですが、自分にとってこの作品は「ストーリー性」より「メッセージ性」の方が強く感じられます。
銀英伝のキルヒアイス展開を続けざまに食らうストーリーには正直凹むのですが、それを通して伝えたいことには、とても共感が持てるんですよ。
一言でいうとするなら、「ぶつぶつ言いつつも、続きが読みたくなる」シリーズ。
このスタイルは全作品共通と見受けられるので、読んだことのない「滅びのマヤウェル」もそのうち読んでみようと思います。
蛇足
振り回す彫刻刀が、「切出し」じゃなくて「三角」なのがちょっと気になりました。
どちらかといえば、「切る」よりも「抉る」ためのもの。
例の神格の象徴的な意味合いでもあるんでしょうか。
*1:あとがき読んだら、ズバリ力説してて一人納得しました。