ハッピー・ホリスター・シリーズ(3)

副題:宝さがし大捜査
作者:ジェリイ・ウェスト
訳:各務三郎
(1980年・読売新聞社発行)
 
うちにある本の中で一番状態が悪い一冊、200頁程度のハードカバーです。
久々に手にとってみたら、カバーは無いわ・日焼けはしてるわ・シミが出てるわの三重奏で、見た目だけなら昭和30年代の仕上がり。
読んだことは間違いないのに、内容をすっかり忘れてたんで長風呂しながら読んでみました。
 

なによりもまず

訳者の手になるまえがきが秀逸だと感じました。
(恐ろしいことに完全にネタバレ)
 
ちょっとだけ引用してみます。

さて――ハッピー・ホリスター・シリーズ物語は、第三巻、「宝探し大捜査」です。
ラスおじさんが、ホリスター夫人に陶製の燈台を送ってきました。この置き物の燈台は、スイッチを入れると明かりもつきます。ところが犬のジップのいたずらで、燈台はこわれてしまいました。
 ビートは接着剤で修理しようとしますが、どうだろう、中から小さな宝石、エメラルドが出てきたんだ!
 
物語は百年前にかもめ海岸で難破した海賊船さがしが中心になります。ホリスター家の五人きょうだいは、はたして海賊船を発見することができるでしょうか?
(まえがき)

このあとに、具体的な冒険の内容を事細かにあげ次の一文で〆ています。

ほんとにこんな胸がおどるような冒険がしてみたいものです。

 
なんて恐ろしいまえがきだろ、なにするか全部書いちゃってるw
けどこれが。不思議なことに気にならなかったのですよ!
 

何故ならこの作品の最大の魅力は、ストーリーではないからです。

引用した部分だけでも、ホリスター夫人・ラスおじさん・犬のジップ・そして主役であるホリスター家の五人きょうだい、実に多くの人物が登場しています。
母親がいれば父親がいるし、おじさんがいればおばさんがいる、ペットは犬だけじゃないかもしれなし、五人もきょうだいがいれば友達の数は相当なものになるでしょう。
(良い人ばかりでは冒険にならないって事も付け足しておきます)
 
こんな賑々しい顔ぶれがポンポンと交わす言葉のやりとりにこそ、本書の楽しみが凝縮されているから、あらすじを明かされたってへっちゃらなのです。
感想を書く上で極力ネタバレを避けるスタンスでいるのですが、こういうアプローチもあるんだなぁと感心してしまいました。
というより。
どこまで*1がネタバレなのか、その辺を深く考えていなかったことに気づかされて目からウロコの気分ですね。
 

で、そろそろ感想の方に。

かもめ海岸で、ホリスターきょうだいと宝探しを競うことになる子供、ラフリーの可愛げの無さにしびれました。
冗談抜きで殴りたくなるほど
その父親がまた、輪をかけて非常識な人間で分かり易いくらい完全な悪役。
とっちめても胸が痛くなる要素がまったくないのが痛快です!
胸のすく話を探しているときにはオススメの一冊ですね。
 
最後はこのシリーズのキャッチコピーで〆てみたいと思います。

宿題すんだらハッピー・ホリスター




今じゃ図書館にあるのかすら分かりませんが(^^;。

追記

アマゾンの取扱状況
高っ。

*1:いや、どこから。かな?