パズルでめぐる奇妙な数学ワールド
- 作者: イアンスチュアート,Ian Stewart,伊藤文英
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2006/01
- メディア: 単行本
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良く出題される算数の問題のひとつに「1から100までの整数の合計を求めよ」ってのがあります。
解法をご存知の方が多いとは思いますが、「美しい答え」のひとつは次のようなもの。
- 同じ数列をもうひとつ用意して、表をつくって考えます
- ただし並べる順番は、もう一方と「さかさ」にします
表にするとこんな感じ
1 | 2 | 3 | 4 | ・・・ | 97 | 98 | 99 | 100 |
100 | 99 | 98 | 97 | ・・・ | 4 | 3 | 2 | 1 |
(長くなったので隠します)
上と下の数字を足した場合、どの組み合わせでも必ず和が「101」になっていることが分かります
その組み合わせが「100通り」あって、なおかつ元にした数列が2組あることから次の式が導かれます。
(1+100)×100÷2
初めてこれを知った時の快感ったらなかったですよ♪
最近出たビートたけしの数学深夜番組の公式本「コマ大数学科特別集中講座」を読んだところ、その時のワクワクした高揚感を思い出しまして、この本を手にとってみました。
内容
もともとは雑誌の連載コラムだったそうな。
その中から、20篇をまとめたのが本著。
各篇ともパズル的なクイズが出題されています。
普通。
こういった数学パズルの本だと、問題そのものを投げっ放しにして解説を端折る傾向があるため「問題がとけないとイライラが募る」のですが、この本ではそんな心配は要りませんでした。
問題を解くコツや裏話を伝えることに主眼が置かれていて、「考え方そのもの」が理解し易く整理されているので、読むだけでも楽しかったです。
扱っているのも、興味をそそる話題ばかりで。
特に次の3つは面白かったな。
裁ち合わせパズルの妙技
十字架型のパネルを切り分けて正方形を作る方法、とか
6個の正十二角形をそれぞれ分割して、ひとつの正十二角形にまとめなおす、とかを
「図を明示した上で解説」してくれてます。
この道の大家が「サム・ロイド」だったんだそうな。
見覚えがあるなと思ったら、GOSICKのロバのパズルで御馴染みですね(笑)*1。
四角に四角を敷き詰める
正方形に正方形を敷き詰める場合、元となる正方形の中心点を通る4分割をすれば事は簡単です。
では。
一つとして同じ大きさの正方形を使わずに正方形を分割する事は可能なんでしょうか?
実は、可能なんだそうな!!
これも証拠として図が用意されていて、一目で納得出来ます。
チョコをちょこっとちょん切れば
いくつかのゲームを例に挙げて、その必勝法を考えている章。
最重要の法則は次の二つ。
- 法則1:相手を必敗の局面に追い込む手が「一つでも」存在するとき、そこは必勝の局面である
- 法則2:「あらゆる」手のどれを選んでも相手が必勝の局面になるとき、そこは必敗の局面である
言葉にすると当たり前の事ですが、サンプルをあげて考えてみるとより納得し易くなります。
例えば、3目並べ。
一度一人でやってみると簡単に分かるのですが、このゲームに存在するのは「必勝法」ではなく「不敗法」です。
先手が真ん中をとった場合、後手は絶対に角をとらないといけません。
じゃないと次の手順で確実に負けます(^^;。
それを逆説的に説明(→後手が角を取らなかった場合の検証を)すると、次のようになります。
1:先手「○」が真ん中
○ | ||
2:後手「×」が角を取らない
○ | × | |
---|---|---|
※角以外ならどこを選んでも一緒。くるりと廻せば・・・。
3-1:○が、×に隣接する角をとる
○ | ||
○ | × | |
---|---|---|
4-1:×はライン成立を阻止するしかない
○ | ||
---|---|---|
○ | × | |
× |
5-1:詰み
○ | ○ | |
---|---|---|
○ | × | |
× |
3以降の手順には、もう一つのルートがあるのですが割愛*2。
言うなれば「限定的な法則1」のゲームってことになるんでしょーね。
思ったこと
数式だけで考えると無味乾燥な数学も、日常レベルに落とし込むと娯楽に変わるのが面白いです。
大体、数学の退屈な点って「実生活で役にたつのか分からない」って事だと思うのですが、これは教え方に問題があるんだなと今では思います。
例えば、三平方の定理とか、ベクトル。
本当に教えようと思うなら、建築の構造力学で重要ってことを教えれば良いんじゃないかと。
(要は「物理」とのマッチングです)
「なんで100人乗っても潰れないのか」(事象)
そこを掘り下げていけば、必ず理由(法則)にぶちあたります。
何より先に「事象」があって、その次に「法則」があるはずなのに、今の学校数学って「法則」しか教えてくれないんですよね。
それは偉大な研究結果ではあるものの、成り立ちを知らない人間にとっては未知の言語と一緒です。
理解しようと思ったら共通の認識、イメージがないと無理。
そのイメージ、つまりは想像力を養う上で、こういったパズル本は重要なんじゃないかなと思いました。